T市で保護のための捕獲のご依頼でした。

元々現場の公園は、置きっ放しの餌が常にあるような状態で、ノラ猫が20匹近く住み着いていたそうです。

そんな公園で、約9年前に生まれたての子猫に熱湯をかけられるという酷い事件がおき、その事に危機感を覚えた犬の散歩仲間で、費用を出し合ってノラ猫たちの不妊手術をすることにしたそうです。

それと並行して、不衛生な放置餌を無くすために当番制で毎日16時にノラ猫に餌をあげ公園清掃もして、食べ残された餌は片付けるということを徹底してきたそうです。

公園のノラ猫全頭と公園周辺の地域のノラ猫にも不妊手術を徹底するということを9年間続けてきた結果、20匹近くいたノラ猫は3匹のみとなったそうです。

ところが、最近になって「車にノラ猫が乗るから餌やりを辞めさせろ」という苦情が公園管理課に寄せられ、公園には「ここで猫に餌をあげないでください」という看板が立てられ、ボランティアさんたちにも直接指導が入ったそうです。

それで、

「事情があって、公園で餌やりができなくなりました。比較的若いオスはなんとか餌場を探せるかもしれないが初めの頃に不妊手術をした9歳になるメス猫はもう弱ってきていて心配なので、保護して家に入れてやりたい。でも捕獲器で一度捕まえているので、捕獲器に入ってくれません。」

という捕獲の依頼を、ねこから目線。に下さったのでした。

現場に到着するとすでにボランティアさんたちが3名で待ってくださっていました。

警戒心の強い子向けの捕獲器を設置して10分ほどで無事保護することができました。

珍しい横耳カットの子でした。

手術済みの印は、Vカットの他に、真っ直ぐのストレートカットや、耳の横を切るサイドカット、ピアスや刺青など様々な印がありました。今はV字かストレートカットで統一されつつある感じですが10年前はまだ色々な形が試されていたそうです。

捕獲器の扉からそっと診察してくれる先生。

動物病院で、ノミダニ駆除など診察をしてもらい、依頼主さんのご自宅にお送りしてお手伝い完了です。

・・・

の予定だったんですが、お送りした際に上記のような経緯を聞き、とっても腹が立ってしまいました。

ノラ猫が日本に存在しているのはボランティアさんのせいではありません。

ボランティアさんのせいで公園にノラ猫が住み着いているのではなく、ボランティアさんのおかげで公園に住み着いているノラ猫がたった3匹だけになったんです。

20匹が9年で3匹になって、新たなノラ猫移入が無い状態をキープしているなんて、めちゃくちゃマネジメントが上手くいっている成功ケースです。

該当市が地域猫活動を推進するためのガイドラインと助成金制度を作る数年前にこの公園での活動が始まっているので、年配のボランティアさんたちは市でそういった制度ができたことを知らず、市の地域猫活動登録ができていないのが残念な点でした。

とはいえ、行政に必要なのは、ぽっと出た苦情でこの取り組みを中断させる事ではなくて、あと唯一できていなかった地域住民への理解を得るためのサポートだと思います。

そこで、依頼主さんに「ここで30分ほどパソコン作業させてもらってもいいですか?」とお願いし、「〇〇公園におけるノラ猫対策の経緯について」という書類にまとめて印刷してお渡ししました。

調べたら該当市は生活環境課が、飼い主のいない猫に対する不妊手術の助成金を発行し、その条件として地域猫活動として実施すること、と市役所のホームページに掲載していたので、公園管理課だけではなく生活環境課に資料を持って地域猫活動として登録したいので地域への説明をサポートしてほしいと相談に行ってみてくださいとお伝えしました。

ボランティアさんたちの努力が水の泡になりませんように。